「沿岸域の地圏環境を介した多面的な相互作用」を一貫したテーマとして研究しています。沿岸域を、陸と海、地下水と地表水といった異なる領域が交わり、互いに動的な影響を及ぼし合う〈界面 ―interface―〉として捉えています。これらの領域を結び、その相互作用を媒介するのが、地圏環境における地下水流動と物質輸送のプロセスです。
研究の中核に据えているのは、こうした相互作用の根底にある物理現象の解明です。具体的には、地質構造の不均質性と時間的に変動する外力が地下水流動・溶質輸送にもたらす影響[1–3]、および高潮に対する沿岸の地表–地下水系の応答[4,5]を対象としています。 方法論としては、現場で観測された現象や現実に起こり得る現象から、支配的な物理プロセスと場の本質的な特徴を抽出し、概念モデルを構築するアプローチを採っています。そのうえで、非線形力学や確率過程の視点も取り入れながら、主に数値解析により、現象がどのような機構で生じ、どのような条件のもとで成立するのかを明らかにします。個々の現象を記述するだけでなく、既存の理論的枠組みを発展させ、一般性のある物理的知見を導くことを重視しています。
同時に、こうした物理的知見を、現実の課題に資する評価・予測手法へと展開しています。複雑な現象を支配する関係を解析式や簡便な指標へと縮約し、必要なデータや計算の負担を抑えながら、物理的な妥当性と実用性を兼ね備えたモデルを構築しています[1,5]。これにより、地下水資源評価や洪水予測、気候変動への適応などに貢献することを目指しています。
さらに、沿岸域を自然と人間社会が相互作用する〈界面〉としても捉えています。気候変動などに伴う地下水資源の変化が人間生活に影響を及ぼす一方で、社会制度・文化・意思決定は、地下水資源へのアクセスや気候変動への適応を方向づけます。こうした自然–社会の相互作用に対し、物理現象の解明を研究の核としつつ、社会科学や伝統知を含む多様な知の体系との接続や幅広いステークホルダーとの協働を通じて、持続可能な水資源管理と気候適応に資する超学際的研究を目指しています。
参考文献
[1] Tajima et al. (2024). Advances in Water Resources, 189, 104714. Link[2] Tajima & Dentz (2025). Advances in Water Resources, 203, 105021. Link
[3] Tajima & Dentz (2025). Water Resources Research, 61, e2025WR040620. Link
[4] Tajima et al. (2023). Water Resources Research, 59, e2023WR034762. Link
[5] Tajima et al. (2026). Water Resources Research, 62, e2025WR042142. Link
学歴
博士(環境学)
職歴
競争的資金等獲得歴
「気候変動による淡水レンズへの影響評価と地下水資源の管理:沖縄県多良間島における数値シミュレーションを用いた事例研究」
「隆起サンゴ礁島嶼の淡水レンズに対する気候変動の影響評価」
「沿岸都市域での海水浸水の地下環境影響評価に向けた詳細地表過程と地下水モデルの統合」
「未培養細菌群CPRの優占する地下水環境条件の解明」
「沖縄県多良間島の不飽和域における塩濃度分布の解明」
「上流分散の抑制のための新たな地下溶質輸送モデルの開発」